認知症の症状

帰宅願望
おかしいなと感じたら、まず最寄りの医療機関へいってみましょう。

今いる場所が生活の場であるのに、「家に帰りたい」と強く思ったり実際に家に帰ろうとしてしまうことをいいます。生活の場は、自宅だけでなく施設や病院の場合もあります。

自分が今いる場所がどこなのか、なぜここにいるのかなどが分からなくなってしまう誤認や見当識障害が関係しています。また、夕方頃になると帰宅願望が強くなることが多いので、夕暮れ症候群を帰宅願望と同じような意味で使うことがあるようです。

例えば、

  • 朝からずっと自宅で過ごしているのに、夕方頃になると「ではそろそろ、おいとまさせてもらいます」と言って外に出て行ってしまう
  • 病院や施設での生活に慣れていたように見えていたのに「もう家に帰らないといけない」と言って外に出て行こうとする
  • 今いる場所を分かっているようだったのに「家に帰らせて下さい」と取り乱したように言い、説明しても分からないようだ

などということがあります。

たいていの人は1日が終わったり疲れたりすれば家に帰りたいと思うでしょうから、帰宅願望という言葉は変な感じがしますが、自宅にいても「家に帰ります」ということがあったり、生活の場が変わっていても「家へ帰る」と強く願うので、このような言葉を使うようになったのでしょうか。

もし「ここは家(自分のいる場所、安心できる場所、家族のいる場所)ではない」と感じたり、今は家では生活していないということが分からなくなってしまったら、とりあえず自分の居場所である家に戻りたいと思うのではないでしょうか。その思いは、想像以上に切羽詰まった、焦りとも不安とも表現しきれない、心を突き動かされるような思いなのではないでしょうか。何故って、心身ともに自分がよそ者ではない場所は家だけなのです。一度その衝動に駆られたら、「胸騒ぎがしてとにかく落ち着かず、胸騒ぎの元を確かめずにはいられない」感じと同じくらい、心がざわめいてしまうのだと思います。そんな時、一緒に行動してくれたり、どうしても外に行けないのなら気持ちの向く先をうまく変えてもらえたりすると、落ち着かない気持ちと心がほっと楽になるような気がします。(看護士H)