人物や場所の誤認
人や場所を認識(顔や建物などを見たり、声や音を聞いたりして、それが誰なのか・どこなのか、自分とどのようなつながりがあるのかを把握)するためには、普段は意識していませんが、実に多くの過程を経ています。その過程はとても複雑なので、簡単な図でおおまかなイメージを見てみましょう。
さて誤認は、(4)の過程で何らかの原因のために、的確に情報を処理できなくなってしまうことによって引き起こされます。通常、情報に取り違えがあった場合、自分で気づいたり人から指摘されたりすることで、新たに情報を整理しなおして正しい認識にたどりつきます。しかし、誤認の場合は、自分では気づけず人から指摘されても「新たな正しい情報」として受け入れられないため、自分なりに解釈した取り違えたままの内容を事実だと思い込んでしまいます。
例えば
● 通常の場合、「この猫の名前はチロだよ」と言われると「そうか、チロだったね」と誤りに気付く
● 誤認の場合、「この猫の名前はチロだよ」と言われても、「タマに違いない」と自分の解釈を変えられない
ということがおこります。
誤認の分類はいく通りかありますが、次に認知症と関わりの大きいものについて説明します。
カプグラ症候群
自分のよく知っている人物(家族など)が、見かけ上まったく同じ替え玉にすり替わっていると感じます。また、人以外のもの(例えばペットや家など)がすり替わっていると感じる場合もあります。
その原因として、次のような説が考えられています。
情報を分析・整理する過程で、慣れ親しんだ人々に対する特別な情報がいくつかあります。
それらの情報がうまく結びつかないと、
例えば
● 顔は分かる
● 名前も分かる(○○だ)
● つながりも分かる(娘だ)
● しかし、当然感じるはずの感情(愛情、親近感、愛着、安心感…)の情報がない
といった状態がおこります。
この状態を無意識のうちに何とか解釈しようとした結果、「その人物はそっくりだが(当然感じるべき感情がないので)偽者に違いない」と信じ込んでしまう、というものです。
幻の同居人
家に架空の他人(客)が住んでいる、と信じ込んでしまう状態をいいます。幻覚(幻視)とは違い、架空の他人が見えているわけではありません。
例えば
● 「誰かが家に入ってきて、屋根裏に隠れ住んでいる」などと言う
● 「誰かが妻と一緒に寝室に隠れている」などと言う
ということがあります。
鏡徴候(自分自身の誤認)
鏡に映った自分の姿(鏡像)を自分自身だと認識できずに、誰かほかの人だと信じ込んでしまう状態をいいます。
失認の項で説明している鏡像認知障害(自己鏡像認知障害および対鏡行動)に当てはまります。
例えば、鏡に映った自分の姿を見て
● 「兄は自分を監視しにきている」などと言う
● 「何でお姉さんが来ているのかしら」などと不審がる
● 「あの女は主人と浮気している」などと思いこんでしまい、「出て行け!」と鏡像に向って怒鳴
ったりものを投げつけたりする
などということがあります。
他者の誤認
ある人を、その人ではない別の人だと信じ込んでしまう状態をいいます。
例えば
● 孫のことを息子(娘)だと信じ込んでしまい
「おじいちゃん違うよ、ボク、孫の○○だよ」と言っても分からない
● 夫のことを父だと信じ込んでしまい
「あの人(夫)は今、家にはいないんです」と言うが、夫の姿が見えたので
「あそこにいらっしゃるのはどなたですか?」と尋ねると、夫の事を指さして顔をしかめながら
「父は厳格な人で、本当に苦労しているんです」と答える
などということがあります。
TV徴候(TVの映像の誤認)
テレビの中の像や出来事を現実のものと取り違えてしまい、映像が現実の空間で起きていることだと信じている状態をいいます。テレビに登場する人物が、実際には部屋の中にいないということが分からなくなってしまいます。
例えば
● TVで見たドラマの内容が、実際に家の中で起こっていることだと思ってしまう
(そのせいで、驚いたり怒ったり泣いたりすることもあります)
● TVの映像の人物に向って話しかけたり、「あの人が家に入り込んできて困る」と言う
などということがあります。
場所の誤認
「自分の家を自分の家ではない」と信じ込んでしまったり、実際にははただ一つしかないはずの場所が、別の場所にも存在すると信じ込んでしまう状態をいいます。
例えば
● 「ここは私の家ではないので、そろそろ帰ります」などと言う
● 「ここはどこですか?家に帰らせて下さい」などと言う
ということがあります。
また、「他にあるはずの家」に帰ろうとして実際に外に出て行ってしまったり、今いる場所が家ではないと思い込んでいるために、不安になったりそわそわしたりという他の行動に繋がることもあります。



















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